マーケティングファネルとは?3つの種類や段階ごとの施策例も紹介

マーケティングファネルは、顧客が購入に至るまでの行動を段階的に図式化したもので、顧客の購買決定プロセスを可視化するために有効なフレームワークです。

しかし、近年の顧客行動や販売チャネルの多様化などにより、マーケティングファネルの有効性が疑問視されるケースもあります。

そこで本記事では、マーケティングファネルの基本や各段階での施策例、BtoBやBtoCでの活用ポイント、他のマーケティングモデルとの違いなどを解説します。

●目次

マーケティングファネルとは

マーケティングファネルは、見込み客が商品やサービスを知り、興味を深めてから検討し、最終的に購入やリピートに至るまでの過程を段階的に図式化したフレームワークです。その図式で表した顧客行動の流れを漏斗(ろうと、じょうご)の形になぞらえて、マーケティングファネルと呼ばれています。

購買決定プロセスのAIDMAやAISASなどの古典的モデルをもとにしながら、インターネットやSNSが普及している現代に合わせて多様化してきました。また、オンライン・オフライン両方の接点を、横断的に可視化できることも特徴です。

BtoBでは購買単価やリードタイムが長く、BtoCでは短期決済が多いなどそれぞれ特徴が異なるため、業態に合ったファネル設計がポイントになります。


・カスタマージャーニーとの違い

カスタマージャーニーは、想定するユーザーの「行動」、背景にある「思考」や「感情」が、どう動くのかを時系列にまとめたもので、顧客が製品やサービスに触れてから購買、さらにその後の体験に至るまでの心理変化や行動を「旅」にたとえたビジネスの概念です。

マーケティングファネルが「認知から購入」へと段階的に移行する流れを数値的に捉えるのに対し、カスタマージャーニーは顧客がSNSや口コミサイトなどを行き来して購買意欲を高める心理的な様子を時系列で可視化し、感情や意識の変化を把握することができます。

購買までのプロセスでステージが前後する可能性も考慮するため、ユーザーが抱く疑問点や不安を洗い出し、自社の施策を顧客視点で見直すきっかけにもなります。

出典:兵庫県「兵庫県 広報ガイドライン」


・フライホイールモデルとの違い

マーケティングファネルが「漏斗」のように一方向で終わるイメージなのに対し、フライホイールモデルは購入後も顧客との関係を継続させてビジネス成長の回転を加速させる概念です。

具体的には、サポートやコミュニティ形成で顧客満足度を上げてファンを生み出し、口コミや評価が新たな見込み客を呼び込み続ける好循環を狙うビジネスモデルです。BtoB商材での長期契約やサブスク型のサービス、D2Cのブランド育成など、顧客とのロイヤルティを重視するモデルと相性が良い点が特徴です。

現代のマーケティングにおいては、マーケティングファネルを導入するだけではなく、フライホイールモデルのような発想で回転を維持する視点が求められます。

マーケティングファネルのメリット

マーケティングファネルを活用するメリットは、顧客がどの段階で離脱しているかを可視化し、施策や広告の費用対効果を客観的に把握できることです。マーケティング部門だけでなく、営業や顧客サポートなど関係部門と共通の指標を使えるため、組織全体で同じゴールに向かいやすくなります。

また、購入後のリピートや口コミ促進まで視野に入れると、顧客ロイヤリティ向上とLTV最大化につながりやすく、長期的な収益源を育む施策が計画しやすくなるメリットもあります。

マーケティングファネルは古い?BtoBとBtoCでの活用

近年はSNSやオンラインチャネルの急激な普及で、顧客の購買プロセスが従来型の直線的な流れに収まらないケースが増えています。そのため、「マーケティングファネルは時代遅れ」という指摘もあります。

しかし、BtoBのように長期的な検討が必要な場面や、BtoCで短期に購買が起こる商品分野で、全体像を把握するフレームワークとしての利点は依然として残っています。

顧客行動が複雑化した今こそ、マーケティングファネルを基盤に据えながら補完的な手法と組み合わせる取り組みが大切です。


・BtoBでの活用ポイント

BtoBの取引では商品が比較的高額であり、かつ導入期間も長期にわたるため、細かくファネル管理をすることがポイントです。そのためには、以下のような施策を実施するといいでしょう。

 認知・興味や関心フェーズ

 興味を持った見込み客には資料請求やウェビナーを案内する

 検討・比較フェーズ

 導入事例やROIの試算を提示して決済者が検討しやすくする

新規獲得だけでなく、既存顧客のアップセルや継続契約を目指す「ダブルファネル」的な運用により、LTV向上を目指すアプローチも有効でしょう。また、アカウントごとに合わせたファネルを設計するABM(アカウントベースドマーケティング)を活用すると、特定企業への受注率を高める戦略が展開しやすくなります。


・BtoCでの活用ポイント

BtoCは購入までのサイクルが短い場合が多く、SNS広告や検索広告で認知を高め、そのままECサイトへ誘導する流れが主流です。衝動買いが起きやすい分だけ、ファネル上部の初期フェーズにおいては、広告露出やランディングページの作り込みが重要になります。

さらに実店舗との連動や、購買した後に紹介や発信をして商品体験のシェアを促すインフルエンスファネル型の施策も組み込み、新規顧客や潜在顧客などの購買意欲促進へつなげると効果的です。

サブスクや定期購入のような継続モデルでは、購入後のフォローや追加価値提供をファネルに組み込み、フライホイール的な顧客関係の回転速度を意識すると、長期的な収益増が期待できます。

マーケティングファネルの種類

マーケティングファネルには、以下のような種類があります。

 ● パーチェスファネル:認知・興味・購入などのプロセスを基本とする

 ● インフルエンスファネル:購入後の口コミ拡散を重視する

 ● ダブルファネル:新規獲得と既存顧客の育成を並行させる

自社のターゲット顧客が購入に至るまでどんなプロセスや心理的変化を経るのかを踏まえて、適切なファネル構成を決めることがポイントです。また、BIツールやMAツールを活用しながら複数モデルを試し、数値で検証して最適化していく企業も増えています。

ここからは、それぞれのマーケティングファネルについて詳しく説明していきます。


・パーチェスファネル

パーチェスファネルは、伝統的なAIDMAモデル(Attention・Interest・Desire・Memory・Action)をベースに、顧客が認知から購入へ至るステップを切り分けて管理する方法です。

離脱率を数値化しやすいため「どの段階に課題があるか明確になりやすい」というメリットがあります。高単価な商品やBtoBの商材だと検討段階が長期化しがちなので、継続的なフォローアップや見込み客の教育を意識する必要があるでしょう。

さらに店舗や展示会を活用して、オンラインとのハイブリッドな接点を作ることで、多角的な方法で顧客と接触することができファネル全体を底上げできます。


・インフルエンスファネル

インフルエンスファネルは、既存顧客やインフルエンサーによる発信を軸に、新規顧客や潜在顧客を認知から興味、そして購入につなげる手法が特徴的です。

 ● SNSでの口コミやハッシュタグ活用

 ● ユーザー生成コンテンツ(UGC)の拡散

これらを意図的に促すためには、顧客参加型のSNS投稿キャンペーンなどの施策展開も有効的でしょう。

ただし、インフルエンサーマーケティングはステルスマーケティングへの批判が起きやすく、炎上リスクも存在するため、企業側が広告であると明示し、誇張表現を避けるなど透明性を保つ運用が大切です。


・ダブルファネル

ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを一体化させたもので、従来の「購入まで」をゴールとする軸とは別に、既存顧客のロイヤルティ向上や追加購入を促すファネルを並行して管理するモデルです。

新規顧客を獲得する一方で、すでに契約や購入をしたユーザーに対してサポートやコミュニティ形成を行い、利用継続を図りながら発信や拡散までの行動を促して利益に結びつけます。

このモデルを最適化するには、カスタマーサクセス部門の充実、アフターサポート体制の整備なども重要なポイントです。これができていないと、せっかく獲得した顧客も離脱しやすくなります。

購入後のプロセスをきちんと可視化し、ロイヤル顧客が新たな口コミ拡散要因になるよう仕組み化することで、長期的な収益拡大を狙えるでしょう。

ファネルの段階ごとの施策例

マーケティングファネルを運用する際は、以下のように段階を区切ることで「具体的な施策」を打ちやすくなります。

 ● 認知

 ● 興味・関心

 ● 比較・検討

 ● 購入

 ● 継続

 ● 共有・紹介

 ● 拡散・発信

それぞれのフェーズにおいて設定すべきKPIや目標が変わるため、リード獲得数、CVR、SNSエンゲージメントなど、必要な指標を明確にしておくと組織内での連携がスムーズになるでしょう。さらに、施策の効果を定期的にレビューし、改善を繰り返すことで、最適なファネル構造をアップデートし続ける仕組みが整います。

ここからは、それぞれ段階ごとの施策例を紹介します。


・認知

認知フェーズでは、自社の存在を知らない人々に向けて広範囲にアプローチすることがテーマになります。テレビ広告やOOH広告、展示会などのイベント出展といったオフライン施策を活用するのも一手ですが、コストやターゲティング精度を考慮するとSNS広告や検索連動型広告を併用するのも効果的です。

また、オウンドメディアのSEO対策を強化し、見込み客が興味を持ちそうなキーワードで記事を作成すれば、潜在層を自然に取り込めます。

SNS公式アカウントを活用する場合はブランドの世界観を発信し、フォローしたくなる要素を盛り込むことで、第一印象から次のステージへの移行を促せるでしょう。


・興味・関心

興味・関心フェーズでは、認知してくれた人がもう一歩踏み込むために必要な情報をタイムリーに提供することがカギになります。具体的には、メルマガ登録への誘導やSNSフォローを促し、最新のお役立ち記事やキャンペーン情報などを発信して存在感を高めましょう。

また、このフェーズでは、顧客が抱きやすい潜在的な不安(価格・導入ハードルなど)を解消するFAQや事例紹介などが効果的です。

さらに、リアル店舗や展示会での体験、オンライン動画やウェビナーなど多彩なチャネルを組み合わせ、顧客の興味を維持しながら次の比較・検討フェーズへのモチベーションを高める仕掛けを作ると良いでしょう。


・比較・検討

比較・検討フェーズでは、顧客が「複数の選択肢を比較して」自分に合った商品やサービスを選ぼうとするため、差別化要素が決め手になります。料金体系や独自機能、サポート体制などを具体的かつわかりやすく提示すると、候補から外されにくくなるでしょう。

オンラインデモや個別相談会を実施することで疑問点を解消し、具体的な導入イメージを抱かせて、購買意欲の後押しを行うことも重要です。

また、実際のユーザーによるレビューやSNSでのリアルな反応は説得力が高いため、第三者評価を積極的に紹介し、商品・サービスの信頼度を高めるのがおすすめです。


・購入

購入フェーズまで進んだ顧客には、いかにスムーズかつ安心して契約や決済を完了してもらうかがポイントです。例えばECサイトの場合、カートページのUIが複雑だと離脱率が上がりやすいため、入力フォームをできるだけ簡略化し、決済方法を多様に用意するなどの工夫が求められます。

また、リアル店舗や展示会ではスタッフによる即時対応が購買決断を後押しする場合が多いでしょう。さらに、返品ポリシーや保証内容を明確に示すことで、購入直前の不安を減らせます。

この購入フェーズでの施策を整備しておけば、せっかく比較・検討まで進んだ顧客を離脱させてしまうリスクを下げられます。


・継続

購入後の継続フェーズでは、サブスク型や定期購入サービスの解約を防ぐための施策が欠かせません。購入直後に、顧客がサービスや商品をスムーズに理解し、効果的に活用できるよう支援する「オンボーディング」が不十分だと、顧客がサービスや商品を使いこなせずに離脱するケースもあるため、わかりやすい操作ガイドや専任サポートなどを整備しましょう。

また、アフターサポートやカスタマーサクセスの整備は、顧客満足度を高め、リピートや追加購入を誘発するうえでも効果的です。さらに、SDGsや社会貢献を打ち出す企業姿勢を示すことで「このサービスを使い続ける意味」を感じてもらいやすくなり、継続率を一層向上させることも期待できます。


・共有・紹介

共有・紹介のフェーズでは、すでに商品・サービスを利用中の顧客が周囲に勧めたくなる仕組みを作ることがポイントになります。

具体的には、紹介者にも新規利用者にも特典が付く「紹介プログラム」を設計し、周囲に伝えやすい環境を整えると良いでしょう。SNS上でレビューや感想を投稿しやすいフォームや仕掛けを用意するのも有効です。

また、専門家やインフルエンサーとのタイアップで客観性のある情報を発信し、潜在顧客の関心を引き上げる施策も手段の一つとして考えられます。

こうした共有・紹介の流れが自然に起こるよう設計できれば、広告費を抑えつつ効果的に拡散フェーズにもつなげられます。


・拡散・発信

拡散・発信のフェーズでは、ファンとなった顧客が自らの体験を周囲に広め、さらなる見込み客を呼び込むのが理想です。この状態に至るには、ブランドへの深い共感と積極的なシェア意欲が欠かせません。

口コミは顧客同士のリアルな声であり、企業が発信する広告よりも説得力が高いとされます。

また、このフェーズでユーザーが感じた課題や要望を確認し、今後の開発・改善に取り入れる仕組みをつくると、顧客参加型のイノベーションが進みやすくなるでしょう。

結果的に、商品やサービスがさらに洗練されていき、次のファンを呼び寄せる好循環を構築しやすくなります。

まとめ

マーケティングファネルは、一見「古いフレームワーク」と言われることもありますが、顧客行動を体系的に整理して数値化し、部門共通の言語として活用できる利点は依然大きいです。

BtoBかBtoCか、高価格帯か低価格帯か、といった条件に応じてファネル構造や施策を変えていくことも重要ですが、マーケティングファネルを活用しながら組織横断のデータ連携やMAツール導入などの基盤整備も、ビジネスの成功には必要不可欠となります。

自社の顧客行動を正しく把握し、必要に応じてカスタマージャーニーやフライホイールのような他の概念と組み合わせ、最適なマーケティング体制を築くことが長期的な成果につながるでしょう。


〈監修・執筆者情報〉

執筆:マーケティングWeek編集部

マーケティングWeekの記事編集部です。マーケティング領域に関する展示会を主催し、マーケティングに関わる有益な情報を発信します。


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