SNSの運用代行とは?業者選びの注意点や依頼できる業務をプロが解説!
いまSNSのアカウント運用は参入者が増え、他社と差別化することが難しくなっています。これまで以上にプラットフォームごとの最適化や、ユーザー心理に基づいたコンテンツ設計の重要性が高まっており、そこで注目を集めているのが、SNSの運用代行です。
本記事では、SNSの運用代行の基礎知識から、運用会社の選び方、成功させるポイントを、長年、SNSマーケティングを第一線で見てきたマーケターの知見を交え、できるだけわかりやすく解説します。
●目次
SNSアカウントの運用代行とは?
SNSアカウントの運用代行とは、外部の運用代行会社にSNS運用を委託し、SNSマーケティングのプロが戦略策定から投稿作成、コミュニティ管理、効果測定まで一貫して行うというもの。
戦略的なSNSマーケティングを実現するための「専門部隊」として機能し、SNSマーケティングの効果を最大化します。さらに、「専門部隊」が業務を担ってくれる分、自社のリソースをほかの業務に使うことができるようになるのが特徴です。
具体的な委託先は以下の4つ。特徴とともに見てみましょう。
SNSの運用代行を依頼したほうがいい会社とは?
SNSのアカウント運用における課題は、各企業の状況によってさまざまです。以下に、よくある課題をいくつか挙げてみましたので、複数の項目が当てはまる場合には、一度、SNS運用の委託を検討してみるとよいでしょう。
・数字が伸びない、またはもっと飛躍的な成果を上げたい
・担当者のリソースが足りず、業務に時間を割けない
・専門知識が不足し、効果的な運用方法やSNSの特性がわからない
・コンテンツ制作の技術や質が十分でない
・ビジネス的な効果が出ているのかわからず、検証していない
SNSの運用代行会社に依頼するメリット
人手不足は運用代行の活用を考えるきっかけになりがちですが、そのメリットは担当者の負担を減らすだけではありません。さまざまな施策を通してマーケティング全体に価値や効果をもたらすのです。ここでは、主要な4つのメリットをご紹介します。
- 自社のリソースをほかのことに使える
- 安定した運用で、成果を期待できる
- 炎上や不備によるリスクを回避しやすい
- 最新のトレンドを取り入れた施策が可能になる
・自社のリソースをほかのことに使える
SNSアカウントの運用は、投稿作成、アカウント管理、コメント対応など想像以上に多くの時間と労力が必要です。運用代行会社を活用することでこれらの業務は手放し、そのほかのマーケティング業務、商品開発、顧客対応など、本来注力すべき業務に集中できます。
特にマーケティング部署の人数が少ない会社では、SNSのアカウント運用をはじめとする細かい施策も自身で抱え込んでしまうと、肝心の全体の戦略や見通し予測に充てる時間が少なくなってしまうことも。費用はかかりますが、最終的に成果に寄与する体制を考えることが重要です。
・安定した運用で、成果を期待できる
プロがSNSアカウントを運用することにより、投稿の質や頻度が安定することもメリットのうちの一つです。
具体的には、効果的な戦略の立案、各プラットフォームの特性を踏まえた最適な投稿内容や時間帯の選択、さらにデータ分析に基づいた改善施策の継続的な実施など、プロフェッショナルならではの知見と経験を活かした運用が可能となります。
継続的な安定運用によって、フォロワー数の増加やエンゲージメント率の向上といった具体的な成果にもつながりやすくなるといえるでしょう。
・炎上リスクなどを回避しやすい
SNSのアカウント運用にはつねに炎上リスクが伴います。多くの運用代行会社はそうしたリスクを回避する知見やノウハウを持った上で、業務を受託しています。そのため、意図せず企業の方針と違うメッセージが発信されたり、ブランドやサービスの世界観を損なう画像が投稿されたりする事態も未然に防ぐことができます。
また、万が一炎上が起きてしまいそうな際にも、事前に兆候を察知し、素早い対応で影響を最小限に抑えるなど、適切な対処をすることでダメージを最小化することができます。
・最新のトレンドを取り入れた施策が可能になる
SNSの世界は、機能の追加、アルゴリズムの変更、流行の移り変わりなど、日々変化しています。加えて、それぞれのプラットフォームごとにユーザー層や特性も異なります。日々、別の業務を行いながら、それらの最新動向をキャッチアップし続けることは容易ではありません。
その点、SNSの運用代行であれば、最新のトレンドに精通したプロたちが運用するため、こうした変化にもいち早く対応できます。SNSは、同じ内容の投稿でも「いつ行うか、誰が行うか」で効果が変わってきます。だからこそ、こうした変化を捉えた運用ができるのは、大きな強みになるといえるでしょう。
SNSの運用代行の流れや依頼できることは?
SNSの運用代行会社には、戦略立案から日々の運用、効果測定まで、SNSマーケティングに関わる幅広い業務を一貫して依頼することができます。
具体的な業務のプロセスは、以下の4つのステップに分類されます。
ここからは、上記4ステップの中の具体的な業務について、それぞれ簡単に解説していきます。
全体戦略
運用戦略・企画
投稿内容作成・配信
レポーティング・改善
SNSの運用代行の料金目安
SNSアカウントの運用代行は、その業務内容の性質上、どうしても料金の価格帯が幅広くなります。
例えば、何個のプラットフォームで運用を依頼するのか、それぞれ月にどのくらいの頻度で投稿するのか、分析レポートの提出は必要なのか、キャンペーン施策やインフルエンサーの起用をするのかしないのか、など。業務内容のカスタマイズ性が高いため、企業ごとにかかる料金に差が出やすくなっているのです。
ここからは、どのようなことに費用がかかり、また価格帯ごとにどのような業務がお願いできるのかを確認していきましょう。
SNS運用代行にかかる費用項目
SNS運用代行にかかる料金には、大きく分けて、以下の4つの費用項目があります。
1. 初期費用(10万円〜50万円)
アカウントの設計・設定から、運用戦略の策定、ガイドライン作成、運用体制の構築まで、スタート時に必要な基盤づくりにかかる費用。規模や要件により費用は大きく変動する。
2. 基本運用費(月額5万円〜200万円)
投稿の制作・配信、コミュニティ管理、運用状況の報告など、日常的な運用業務にかかる費用。プラットフォーム数や投稿頻度により金額が変動する。
3. レポート作成・提出費用(月額1万円〜20万円)
月次レポートの作成、改善提案、定例会の実施など、PDCAサイクルを回すために必要な分析・報告業務の費用。必ずしも運用費と別項目になっているわけではないので、事前に含まれているのかどうかの確認が必要。
4. オプション費用
以下のような、追加で必要となる施策に応じて発生する費用。
・クリエイティブ制作:静止画1万円〜/枚、動画4万円〜/本
・キャンペーン実施:30万円〜/回
・インフルエンサー施策:2〜4円/フォロワー数
・広告運用:広告費の20% 比較的
・依頼できる業務範囲の目安
予算規模に応じて、一般的に以下のような業務範囲での依頼が可能です。
なお、上記の価格帯による分類はあくまで目安であり、代行会社や具体的な依頼内容により変動します。最適なプランを選択するためには、複数の代行会社に問い合わせてサービス内容や料金などを確認し、自社に必要なサービスを提供しているのはどこかを見極める必要があります。次章からご紹介する代行会社を選ぶためのポイントを参考にしてみてください。
失敗しないためのSNS運用代行会社の選び方
SNS運用代行会社の選定は、その後の運用成果を大きく左右する重要な要素です。適切なパートナーを選ぶために、ここからは運用代行会社選びに失敗しないための6つのポイントを、詳しく解説していきます。
・自社の予算や規模感と合っているか
企業規模や事業内容により、最適な運用代行パートナーは異なります。
例えば、小規模企業や個人店の場合、個人事業主やフリーランスに依頼すれば、コストを抑えながら、フットワークの軽さを活かした柔軟な対応ができます。また、担当者と気軽にコミュニケーションが取れることで、スピーディーな運用調整も実現できます。
一方で、企業規模が大きい場合は、企業やブランドの信頼性の観点から、セキュリティ対策や危機管理体制が充実した大手代理店や総合マーケティング会社の選択が望ましいでしょう。また、全社的なマーケティング戦略との連携や、複数プラットフォームの一括運用においても、大手代理店の体制が効果を発揮します。
ただし、どちらの場合もSNSマーケティングの目的により一概には言い切れない部分があります。予算の規模は、運用の品質や目標達成のための成果に直結することから、自社のSNSマーケティングの位置づけを明確にした上で、適切な予算配分を検討することが重要です。
・依頼するSNSでの実績やノウハウがあるか
SNSプラットフォームごとに、効果的な運用手法や求められるスキルは大きく異なります。代行会社を選ぶ際は、依頼を検討しているSNSでの具体的な実績と、プラットフォーム特有のノウハウを持っているかを確認することが重要です。
代行会社の選定時には、これらのプラットフォーム別の要件に加えて、過去の運用実績や具体的な成功事例の確認を行うことをおすすめします。特に、自社と同じ業界での運用経験があれば、業界特有の課題やニーズへの理解も期待できます。
・マーケティングやビジネスに精通しているか
SNSのアカウントは、運用してフォロワー数やいいね数が増えるだけで自社に利益をもたらしてくれるわけではありません。まずは、ビジネス成果を目的としたマーケティングの全体戦略で広告やSNSなどの各チャネルがそれぞれどう機能すべきかを策定し、チャネルごとの優先度や各施策との関係性が定まってこそ、SNSのフォロワー数といった個別目標がビジネスとして意味を持ったものになります。
そのため、代行会社の選定においてはSNSの運用力だけでなく、広告運用やコンテンツマーケティングなど、包括的なデジタルマーケティングのノウハウやビジネスの視点を持っているかどうかも重要なポイントです。特に、SNS広告の運用も一括で依頼できれば、オーガニック投稿との相乗効果も期待できるでしょう。
あくまでマーケティング戦略の一環として、KPIの設定からデータ分析、改善提案まで、全体を見据えた戦略的なアプローチを提案してくれる会社を選ぶようにしましょう。
・クリエイティブ制作の質は十分か
SNSにおけるクリエイティブの質は、運用成果を大きく左右する要素です。そのプラットフォームに適した表現方法、ターゲット層に響く内容、そして企業やブランドイメージをより強くする発信など、効果的なアプローチの方法は、SNS運用の肝といってもいい部分です。
代行会社の選定をする際は、写真や動画の制作力はもちろん、各プラットフォームの特性やターゲット層に合わせたクリエイティブの最適化能力を確認することが重要なのです。
過去の運用実績や投稿の品質、アカウント運用チームの知見などを総合的に判断し、成果へと繋がる運用をしてくれる代行会社を選びましょう。
・効果測定やPDCAによる継続的な改善を行えるか
SNS運用は投稿を配信して終わりではありません。エンゲージメント分析、フォロワーの反応、リーチ数の推移など、さまざまなデータを収集・分析し、継続的にPDCAサイクルを実施することが重要です。
ポイントは、単なる数値の報告だけでなく、それを元に具体的な改善提案を行ってくれるかどうか。選定する際は、レポーティングの内容や過去の改善例などを確認し、PDCAサイクルを安定して回せる体制が整っているかどうかを判断するようにしましょう
・運用とフォロワー増加の、両方ができるか
日常的なSNS運用と、フォロワー数の増加施策は、じつはそれぞれ異なるノウハウが必要です。通常の運用では、投稿の質と継続性が重要である一方、フォロワー獲得では広告運用やキャンペーン設計、インフルエンサー施策など、より積極的なアプローチが求められます。
代行会社の選定では、この両方の専門性を持っているかを確認することが大切です。
フォロワーとの関係を構築するノウハウを持ち、プロモーション施策の実績が豊富な会社を選ぶことで、安定した運用と効果的な成長戦略の両立が期待できます。
SNS運用代行の注意点
うまく活用できれば、大きな武器になるSNS運用代行ですが、外部の会社に業務を委託する以上、注意しなければいけない以下のような点もあります。
- 想定した効果が出ない場合がある
- フォロワーを購入するようなサービスは危険を伴う
- 依頼先によっては炎上リスクがある
・想定した効果が出ない場合がある
SNS運用代行は「利用すればかならず大きな成果が出る」というわけではありません。何か一つを改善するだけで、フォロワーが増える、エンゲージが高まるというほど、SNSは単純ではないからです。SNSマーケティングを行う以上、「それほど単純ではない」ということは心構えとして持っておきましょう。
とくに、SNSマーケティングを行う上で一番危険なのは、短期的な数値改善にとらわれてしまうこと。例えば、いかにフォロワー数が増えたとしても、それが売上に繋がらない、将来的な顧客になる存在でないのなら、ビジネスの成果としてはあまり意味がありません。
SNSを運用する上で、自社の目標や本当に達成すべきKPIはなんなのか。それを明確にした上で、代行会社と話し合いを重ね、適切な運用と進捗確認を行うことが、担当者自身の役割だといえます。
・フォロワーを購入するようなサービスは危険を伴う
フォロワー数を短期間で増やすことを約束する、あまりにも安価な運用代行サービスには要注意です。こうしたサービスの多くは、フォロワーの購入や自動フォロー・自動いいねなど、不適切な手法を用いている可能性が高く、ひどいときには利用規約に違反しているケースもあります。
また、こうした手法はアカウントの凍結リスクがあるだけでなく、エンゲージメント率の低下や、ブランドイメージの毀損にもつながりかねません。
目先のフォロワー数に一喜一憂するのではなく、適切な手法で健全に運用してくれる代行会社を見極めるようにしましょう。
・依頼先によっては炎上リスクがある
経験や知識が不足した運用代行業者、あるいは個人事業主などへの委託は、予期せぬ炎上が起きるリスクがあります。とくに炎上した際の対応について、ノウハウがあるのとないのとでは、そこで負う傷の深さが変わってくるでしょう。
事前に、損害賠償の契約を結んでいたとしても、失った信頼や企業イメージが元通りになることはありません。
運用代行業者の選定では、危機管理に対する意識や、トラブルへの対応実績を確認しておくことが重要です。また、契約前に緊急時の対応フローや、企業側との連携体制について明確な取り決めを行い、リスクを最小限に抑える体制を整えておくようにしましょう。
まとめ
SNSアカウントの運用代行の利用は、SNSマーケティングのプロのノウハウを活用することで、SNS運用の価値を発揮しながら、社内リソースの最適化も実現する手法です。とくに、SNS運用のノウハウを持っていなかったり、マーケティング担当者が不足していたりする会社にとっては、うまく活用できれば大きな武器になるでしょう。
しかし、「とにかく安くて早く成果がでる会社を選ぼう」「よくわからないけれど、お願いすればうまくやってくれるはず」と、適当なまま進めてしまうと、あまり効果を実感できなかったり、結果的に企業のイメージに傷を付けてしまったりする恐れがあります。
まずは、依頼する担当者自身が「どのような目的で、どのような業務を依頼するのか」を考えてみましょう。ただし、それらも慣れていない方にとっては難しいものですので、マーケティングの全体戦略や、SNSの役割を言語化してくれる運用代行会社や広告代理店と組むのもおすすめです。信頼できるパートナー選びにしっかりと時間をかけ、SNSの運用委託を成功させましょう。
〈監修・執筆者情報〉
執筆:
中西 泰文(Hakuhodo DY ONE)
経歴:
新卒で大手メディア会社へ入社。宣伝部門の立ち上げ、自社の宣伝物に関してクリエイティブディレクションからPMまでを担う。2019年にHakuhodo DY ONEへ参画。メディア部門にて、LINE、Yahoo!、Meta、X、TikTokなど、さまざまなメディアを担当。2022年からメディア部門部長として、メディアへの向き合いに加え、メディアプランニングチームをリード。グループ会社への兼務出向などを経て、2024年よりSNSソリューション局 局長。
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